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和歌山県立近代美術館で「和歌山-日本」展 初公開の県庁完成時設計図面も

フロアレクチャーで黒住章堂のふすま絵の説明を聞く観覧者たち

フロアレクチャーで黒住章堂のふすま絵の説明を聞く観覧者たち

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 企画展「和歌山-日本 和歌山を見つめ、日本の美術、そして近代美術館を見つめる」が9月8日、和歌山県立近代美術館(和歌山市吹上1、TEL 073-436-8690)で始まった。

和歌山県庁本館竣工時の設計図面

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 同館が所蔵する和歌山県ゆかりの作家作品を「和歌山-日本」の視点から6章構成で見つめ直す同展。

 同館は1970(昭和45)年開館の全国で5番目の近代美術館。1963(昭和38)年に開館した県立美術館が、主に明治以降の美術を扱う「近代美術館」と江戸時代以前を扱う「博物館」に分かれ誕生した。

 序章は、同館や近代美術館の歴史を紹介。新たな表現を求めて活動した作家を紹介することを「近代美術館の使命」とし、日本の「抽象」表現の先駆者である恩地孝四郎(1891-1955)を取り上げる。版画家・恩地孝四郎は、父が橋本市出身、木版画集「月映(つくはえ)」を共同制作した親友の田中恭吉が和歌山市出身(1892-1915)。抽象表現の登場は、それまでの事物の再現描写に反旗を翻した絵画の革命的出来事で、抽象絵画の章では川口軌外(1892-1966、現・有田川町出身)と県立新宮中学校卒業の村井正誠(1905-1999、岐阜県大垣市出身)の作品も展示する。

 近代洋画の章では、黎明(れいめい)期に活躍した女性画家・神中糸子(1860-1943、現・和歌山市出身)、1920年~40年代にかけてアメリカで活躍した石垣栄太郎(1893-1958、太地町出身)などの作品を展示。日本画の章では、下村観山(1873-1930、和歌山市出身)、川端龍子(1885-1966、同市出身)などの作品や、寂光院(松江中)の庫裏(くり)解体時に行われた文化財緊急調査で明らかになった黒住章堂(くろずみしょうどう)(1877-1943、岡山県出身)のふすま絵を展示する。そのほか、版画、彫刻の分野で活躍した県ゆかりの作家の作品を紹介。特別出品として、今年で完工80周年を迎える和歌山県庁本館の完成当時の設計図面を初公開する。

 同展を企画した館長の山野英嗣さんは「抽象画はわからないという人もいるかもしれないが、印象派が展示会を重ねて市民権を得ていったように、実作品を集めた展覧会を開催し、コレクションを形成していくという両輪で積極的に発信していくことが近代美術館の使命だと思っている。作品を発掘することで美術史を作っていきたい」と意気込む。

 開館時間は9時30分~17時。月曜休館(9月17日・24日と10月8日は開館、翌火曜日休館)。観覧料は、一般=510円、大学生=300円。高校生以下・65歳以上無料。10月20日まで。

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