
人工授精でふ化したキングペンギンのひな2羽が現在、アドベンチャーワールド(白浜町堅田、TEL 0570-06-4481)で順調に育っている。
繁殖施設「ペンギンベース」で暮らす2月23日生まれのキングペンギンのひなと母親、育ての父親
2月9日と同月23日にふ化したひなの出生時の体重は、それぞれ191.3グラムと165.5グラム。6月1日の測定では、2羽とも約15キロまで成長した。現在は母親と育ての父親と共にペンギンの飼育・繁殖施設「ペンギンベース」で過ごしている。
同園でのキングペンギンの人工授精成功は、2020年、20221年に続く3、4例目。国内では、2019(平成31)年4月発表の「鴨川シーワールド」(千葉県鴨川市)に次ぐ4、5例目となる。同ひなは、DNA鑑定の結果、精子を提供した雄の遺伝子を持つことが分かったという。
同園と近畿大学(大阪府)は2017(平成29)年に展示・希少動物の繁栄のための共同研究をはじめとする産学連携の協定を締結。同大学生物理工学部先端技術総合研究所(海南市南赤坂)が、精子の活性を維持する希釈液の使用や精液注入法などを技術指導した。現在は、キングペンギン専用の保存液を開発し、精子の凍結保存まで完了。今後、凍結した精子からの人工授精を目指す。
飼育スタッフの大森美穂さんは「人工授精はまだ手技がしっかりと確立しておらず、模索を続けながらの取り組みだが、チームで取り組むことでスタッフ全員の成長につながった。4年ぶりの成功でうれしい」と話す。「人工授精はペンギンたちの遺伝的多様性を守ることにつながると改めて感じた。さらなる手技の確立やエンペラーペンギンを始めほかの種類のペンギンにも活用できるよう取り組んでいきたい」とも。