
和歌山県在住の小説家・宇野碧さんが9月18日、小説「アンダーザスキン」を講談社から刊行した。
同作は、タトゥーイスト(彫師)を母に持つ主人公・針生榴が、母の肌に入ったタトゥーの美しさに魅せられ、同じ道を歩むヒューマンドラマ。世間からの偏見や母との決裂などさまざまな困難にぶつかり、自分を見失った榴が、本来の自分を取り戻していく姿を描く。
宇野さんは1983(昭和58)年、兵庫県生まれ。2013(平成25)年、和歌山県に移住した。2022年に小説「レペゼン母」で第16回「小説現代長編新人賞」(講談社主催)を受賞し作家デビュー。「キッチン・セラピー」(講談社)、「繭の中の街」(双葉社)を刊行し、「アンダーザスキン」は4作目。デビュー作「レペゼン母」は、今月10日に文庫化した。
宇野さんは「日本では依然として偏見が根強く、タトゥーイストをプロフェッショナルとして描いた仕事小説は少ない。生きるのが下手で、『それしかできない』主人公の行く末を追うことで、自分自身を抱きしめられるような読書体験をしてほしい」と話す。「和歌山県民は本を読まない人が多いとも聞くが、『レペゼン母』の読者からは普段は読書をしないが夢中で読んだと感想をもらい、うれしい驚きがあった。文庫版は逢坂冬馬さんの解説が加わり、作品の本質に迫るぜいたくな一冊になっている。小説を手に取るきっかけになれば」とも。
四六変形、432ページ。価格は2,530円。