和歌山市の「和歌の浦アート・キューブ」(和歌山市和歌浦南3)で2月13日に開かれた「和歌の浦まちづくりシンポジウム」に約120人が集まった。主催は和歌山市都市再生課。
和歌の浦は市南西部に位置し、古くは万葉集に詠まれた景勝地。2010年には国指定の名勝に指定され、2014年には和歌浦天満宮と紀州東照宮の境内などが名勝の追加指定を受けた。
開会のあいさつで、尾花正啓市長は「今日のシンポジウムは、和歌の浦を活性化しようと活動している団体をつなぎ、和歌浦の素晴らしい観光資源をもっと生かしていくきっかけにしたい」と意気込んだ。
建築家で和歌山大学客員教授の広谷純弘さんや玉津島保存会の渋谷高秀さんらが出席。和歌の浦の自然や歴史、文化を守りつつ、どのように活用していくかについて講演を行った。
講演「つながる建築」で登壇した広谷さんは「画家や彫刻家が自ら内なる声と対話しながら作品づくりに取り組むのとは異なり、建築は他者との対話の中で生まれてくる。建築はそれだけで自立した存在ではなく、どれだけ多くのものとつながっているかに、その価値がある。和歌の浦は、町全体を博物館に見立てた『ミュージアム・タウン』と呼ばれる構想を目指すべき」と語った。
シンポジウム後半のパネルディスカッションでは和歌山大学観光学部准教授の永瀬節治さんがコーディネーターを務め、広谷さん、渋谷さんのほか、和歌山市景観審議会・建築士会の中西重裕さん、和歌山市都市計画部部長の南方節也さんが登壇した。
渋谷さんは「ここにいる皆さんは、地域が好きで生まれ育った場所をよくしたいと思いながら活動を続けている。全ては人。人が何かを創り出し、また壊すこともある。文化財は指定されている限り永遠のものだが、人は例外なく必ず死ぬ。これからも知恵を働かせながら地域活動を続けていくことが、次の世代への継承も含めた大きな課題」と話した。