和歌山の港町、加太の淡嶋神社で3月3日(和歌山市加太)、恒例の「ひな流し」が行われた。
紀州徳川家でかつて、姫君が誕生すると初節句に同神社に一対のひな人形を奉納したという慣習が発祥の同行事。人形供養の神社としても知られる同神社には今年も4万5千~5万体のひな人形が全国から送られてきた。
ひな流しは女の子の健やかな成長と幸せを祈り、白木の舟に乗せ海に流す神事。同神社は全国の流しひなの行き着く先で、ここから神々の国に旅立つとも言われている。
3000対の女びな男びなが並べられた本殿では正午に祈願を行い、みこたちが1体ずつ人形の顔を参拝者に見せながら約100体ずつ畳一畳ほどある舟3艘(そう)に次々と乗せていった。ひなを乗せた舟は女性の担ぎ手により約1キロ離れた海岸に運ばれ、海に浮かべられた。
大阪から夫婦で来たという女性は「淡島神社には来たことはあったが、ひな流しは初めて。女性なら担ぎ手になれる聞いて船を担がせてもらった。人形を乗せた舟が海にこぎ出す光景はとてもきれいだった」と話す。
宮司の前田光穂さんは「今年は暖かく、桃の花も咲いて、約10年ぶりのよい天候に恵まれた。例年3000人ほどの人が訪れるが、今年は5000人近い人に見守られ無事に神事を終えることができた。今年全国から送られてきたひな人形の傾向は、近年のコンパクトな人形と比べると大きく立派なものが多かった。紀の川上流の五條や粉河の人形の思いも人型に込めて一緒に送り出した」と話す。