日本で唯一の「飛び地村」として知られる和歌山県東牟婁郡北山村で、5月から運行する「観光筏(いかだ)下り」が40周年を迎えた。運営は北山村観光センター(TEL 0735-49-2324)。
周囲を三重県と奈良県に囲まれ、和歌山県の市町村と隣接しない「飛び地」の村として知られる同村。現在約450人が暮らし、三重県熊野市との県境を流れる北山川沿いは1996年、「美しい日本のむら景観コンテスト」で農林水産大臣賞を受賞した。
「北山村由緒記」によると、北山産木材を使った伏見城の一部は1596(慶長元)年の大地震でもびくともせず、江戸城の本丸築城の際にも北山産木材が使われたという。江戸方面を最大市場として当時、新宮へ木材を運ぶ最適手段として「筏(いかだ)流し」が行われた。
1963(昭和38)年には北山川上流にダムが建設され、木材輸送は全てトラックとなり筏流しは廃絶。1979(昭和54)年に村の産業文化を残そうと「観光筏下り」が始まった。杉の丸太8本で組んだ筏を7つ連結した全長約30メートルの筏で、約1時間10分かけて北山川の一部を下る。1つの筏に4人が乗船し、乗客は最大28人。現在は毎年5000人以上の観光客が訪れ、年間300回以上行っている。
同村役場の三浦俊夫さんは「乗船した観光客からは、迫力があって景色がきれいだったという感想を多くいただいている。北山村にとって筏下りは重要な文化。50年、60年と継続できるように努めていきたい」と話す。
大阪から訪れた男性は「昔の同僚と一緒に観光で来た。筏の先頭に座っていたところ、頭まで川の水が迫ってくる迫力に驚いた。腰までぬれるのは覚悟していたが、ここまで迫力があるとは。次回は家族と一緒に来たい」と笑顔を見せていた。
運行は1日2便。第1便受付=9時~10時20分、第2便受付=11時30分~12時40分。料金は、大人=6,000円、小学生=3,000円。9月30日まで。