中田の棚田で収穫された稲でしめ縄を作るワークショップ「しめ縄飾り体験」が12月21日、紀美野町で開催された。
同ワークショップは、長年親しまれてきた棚田の文化を後世に伝えることを目的にした「中田の棚田再生プロジェクト」の一環。2020年に紀美野町まちづくり推進協議会から発足した小川地域棚田振興協議会(紀美野町)が中心になり、運営する。啓発活動やワークショップを企画し、市民の協力を得て、棚田の再生と維持管理を行う。しめ縄作りのほか、2月に「鍋敷きワークショップ」など稲わらを活用した企画を行う。
生石高原の麓に広がる中田の棚田は、1425年の文献「天野社一切経会段米納日記(あまのしゃいっさいきょうえたんまいおさめにっき)」に記載があり、生石ケ峰の豊富な谷水の「竜王水」を水資源とした600年以上の歴史がある。
今年で4年目となった「しめ縄飾り体験」には6人が参加した。棚田で今年収穫した稲のわらを使い、縄作りの練習から始まった。わらで作る縄は、農業などの一般使用は右回しでひねり、しめ縄など神事で使用される物は左回しでひねるという。ワークショップ参加者は慣れない作業に苦戦していたが、プロジェクトメンバーの指導で縄を作っていった。練習の後、本番のしめ縄を制作し、思い思いの飾りを付けしめ縄を完成させた。参加者には、棚田で栽培した米「あさひ」1キロが進呈された。
子連れで参加した和歌山市在住の40代男性は「知人からの紹介で取り組みを知った。しめ縄作りに関心はあっても、機会がなかった。初めての縄作りはとても大変だったがなんとか形になって良かった。家の玄関に飾りたい」と笑顔を見せる。
小川地域棚田振興協議会の前澤邦彦副会長は「初めは継続していけるか不安だったが、地域住民の協力もあり2年、3年と継続できている。中田の棚田は、地形から一般の田畑と比べると手間がかかり収穫量も少ないため維持が難しい。今後は農業でも農業機器の進化やAIなど技術革新で難しい地形でも負担は減ってくると期待している。棚田の文化を残すため、まずはたくさんの人に関心を持ってもらいたい。今後も皆さんが参加できる企画をしていきたい」と話す。