和歌山・白浜の「京都大学白浜水族館」(西牟婁郡白浜町、TEL 0739-42-3515)で現在、企画展「ヤドカリと貝殻 生態と芸術」が開かれている。
東京タワー、首都高速道路、副都心ビル群などをモチーフにした東京の「やど」を背負ったホンドオニヤドカリ
同展は3Dプリンターで製作した透明な「人工やど」を背負ったヤドカリと、その生態を紹介する。人工やど製作は、現代美術家の「AKI INOMATA(アキ イノマタ)」さん。作品名は「やどかりに『やど』をわたしてみる」。アキさんはヤドカリやミノムシなどの生物と人工物の組み合わせの作品を発表し、社会における境界を問いかけるプロジェクトを世界各国で展開している。
展示では、イボアシヤドカリ、コモンヤドカリ、イシダタミヤドカリ、ソメンヤドカリ、ホンドオニヤドカリの5種類がそれぞれ、ギリシャ、モロッコ、中国、フランス、日本の建造物をモチーフにした透明な樹脂の「やど」を背負い、動く姿を見ることができる。併せてヤドカリの専門家で日本甲殻類学会の会長でもある同館館長の朝倉彰さん監修で、ヤドカリの生態について詳しく紹介するパネル・映像も展示する。
同館はヤドカリのほか、白浜周辺に生息する無脊椎動物を中心に、カニ・ヒトデ・ロウニンアジなど、約500種の生物を常時展示する。
大阪府から訪れた子ども連れの男性は「白浜には夏休みの観光で訪れている。京大の水族館はマニアックな種類が多いと聞いて立ち寄った。ヤドカリは透明でとてもキレイ。普段は見ることができない『やど』の中が見ることができて、面白かった」と話す。
飼育員の原田桂太さんは「今年の夏はヤドカリの効果もあってか、例年より来場者が多いようだ。ヤドカリは磯で見かける身近な生き物だが、深場には大型のものも生息しているし、さまさまな品種もいる。貝を再利用して移動して生活するという特殊な進化をした珍しい生き物だ。普段は見る機会のないヤドカリ同士が貝を奪い合う動画も公開しているのでじっくり観察してほしい」と話す。「毎年、この時期になると必死にメモを取る子を見かける。解説ツアー、バックヤードツアー、餌やり体験などを用意しているので、夏休みの自由研究にもぜひ足を運んでほしい」と笑顔を見せる。
開館時間は9時~17時(入館は16時30分まで)。入館料は、高校生以上=600円、小中学生=200円。10月22日まで。
※取材時の会期は10月1日まででしたが、好評につき延長されました。(9月7日13:30修正)