
エンペラーペンギン親子(2020年誕生個体)
アドベンチャーワールド(和歌山県白浜町)は、‘‘世界で初めて(当パーク調べ)’’エンペラーペンギンの人工授精による有精卵の確認に成功しました。エンペラーペンギンは、世界中でも3カ国(アメリカ、中国、日本)のみで飼育されている希少な種であり、人工授精によって受精卵が確認された事例は、当パークが把握する限り世界で初めての成果となります。
エンペラーペンギンのオスから採取した精子を、2025年7月~8月にかけて4羽のメスに複数回注入し、3羽のメスが産卵しました。うち、2025年8月12日(火)に産卵した卵が、有精卵であることを確認しました。その後、卵殻に異常が見られ、胚の発生が途中で止まったため孵化には至りませんでしたが、本成果は、飼育下における遺伝的多様性の維持に向けた繁殖研究の大きな一歩です。アドベンチャーワールドはこれからも、種の遺伝的多様性を維持し、動物たちのいのちを未来に送り継ぐために取り組んでまいります。
【エンペラーペンギン 人工授精による有精卵について】
■人工授精日:2025年7月27日~2025年7月31日の期間、今回産卵したメスへ4回注入。
■産卵日:2025年8月12日(火)
■検卵日
<1回目>2025年8月31日(日)
有精卵であることを確認
<2回目>2025年9月 6日(土)
卵殻に異常があり、発生(受精卵が細胞分裂を繰り返して個体になるまでの過程)が止まってしまっていることを確認
■親情報
母親 1997年11月16日搬入 (28歳)
父親 2004年 9月24日生まれ(21歳)※アドベンチャーワールドで初めて誕生したエンペラーペンギン
2025年11月、DNA鑑定の結果により、今回人工授精に用いたオスであることが確定
【エンペラーペンギン 未来の繁殖に向けて】
現在、日本国内でエンペラーペンギンを飼育しているのはアドベンチャーワールドと愛知県の名古屋港水族館の2園館のみです。当パークではこれまで誕生した16羽の赤ちゃんはすべて同じ両親から生まれており、血統の偏りが課題となっています。未来の繁殖のため2009年より、国内の2園館でブリーディングローンを開始しました。2019年の3月には10年ぶりにブリーディングローンとして1羽ずつ血統交換を行いました。さらに、ペアを作って産卵をしても有精卵に繋がらないペアも多く、自然繁殖のみでは、特定の遺伝子に偏るなどの問題があるため、ペンギンの羽数維持、遺伝的多様性を保つためには人工授精の技術も必要となります。エンペラーペンギンでは2024年から人工授精にチャレンジしており、今後も、自然繁殖と人工授精の併用を進め、飼育下における種の保存への貢献につながるよう努力してまいります。
※ブリーディングローンとは
希少な動物を絶やさず増やしていくために、動物園や水族館同士で動物を貸したり借りたりする制度のことです。双方で協力して種の保存に取り組んでいます。ブリーディングローンの実施により、希少動物のペア飼育や群飼育が進み、たくさんの動物が繁殖に成功しています。
【アドベンチャーワールド エンペラーペンギン繁殖の歩み】
1997年:エンペラーペンギン繁殖研究開始
2004年:日本で初めてエンペラーペンギンの赤ちゃんが誕生。世界でも2園館目となる貴重な出来事でした。
2004 年~2011年:完全人工育雛によって計6羽の赤ちゃんが誕生・成長。
2012年:初期人工育雛に初めて挑戦するものの、親鳥の給餌がみられず、完全人工育雛に切り替える。
2013年:エンペラーペンギンの繁殖において、初めて親鳥からの給餌を確認。(初めて初期人工育雛に成功)
2015年:初期人工育雛に挑戦するものの、親鳥からの給餌がみられるまで約3か月かかり、
その間はスタッフが給餌を行う。
2016年:初期人工育雛に挑戦してから4羽目、累計10羽目の赤ちゃんが誕生。
親鳥のもとへ返し、約2週間後には親鳥からの給餌がみられ無事に成長。
2017年~2021年:計5羽の赤ちゃんが誕生し、初期人工育雛にチャレンジ。
2025年:9月30日に16羽目の赤ちゃんが誕生。
【アドベンチャーワールド ペンギンプロジェクトについて】
アドベンチャーワールドでは、1978年の開園時にフンボルトペンギンとキタイワトビペンギンの飼育を開始し、1990年から自然界で暮らすペンギンコロニー(繁殖群)を再現すべく、「ペンギンプロジェクト」として本格的に飼育・繁殖研究に力を注いできました。アデリーペンギン、ヒゲペンギン、ジェンツーペンギン、キングペンギンと繁殖実績を積み、1997年に世界最大のペンギン、エンペラーペンギンの繁殖研究を開始しました。
【アドベンチャーワールド ペンギン繁殖実績について】
1978年 :フンボルトペンギン初繁殖
1990年 :アデリーペンギン、ヒゲペンギン、ジェンツーペンギンの卵を搬入 人工孵化、育雛を行う
1992年 :キングペンギンの卵を搬入。人工孵化、育雛を行う
1994年 :ジェンツーペンギン初繁殖
1995年 :キングペンギン初繁殖
1996年 :アデリーペンギン初繁殖
1997年 :エンペラーペンギンの赤ちゃんを搬入、人工育雛を行う
1998年 :ケープペンギン初繁殖
1999年 :ヒゲペンギン初繁殖
2004年 :世界でも2園館目となるエンペラーペンギンの繁殖に国内初成功
2005年 :エンペラーペンギンの国内初繁殖に対して日本動物園水族館協会より「繁殖賞」を受賞
2006年 :キタイワトビペンギン初繁殖。これにより国内最多となる 8 種類のペンギンの繁殖に成功
2020年 :国内で2例目となるキングペンギンの人工授精に成功
2021年 :フェアリーペンギンの卵を搬入、孵化

エンペラーペンギン
【エンペラーペンギンについて】
■分類:ペンギン目 ペンギン科
■生息地:南極大陸およびその周辺
■学名:Aptenodytes forsteri
■寿命:約30年
■英名:Emperor Penguin
■食生:魚類、イカ、オキアミなど。アドベンチャーワールドでは主にオオナゴ、ホッケなどを与えています。
■繁殖:南極大陸で繁殖するのは、中型のアデリーペンギンと並んでエンペラーペンギンの2種類だけですが、アデリーペンギンの繁殖シーズンが、雪溶け後に岩場が露出する夏場なのに対して、エンペラーペンギンはマイナス60度にも至る冬の氷原で繁殖を始め、約120日間にも及ぶ絶食の中ヒナを育てることから「世界で最も過酷な子育てをする鳥」だと呼ばれています。およそ5歳で性成熟に達します。メスは産卵後、餌を取りに 海へ行き、繁殖地に残ったオスは絶食状態で約2か月間卵を抱き続けます。
■特徴:世界最大のペンギンで体長約120cm、体重約40kg に達し、側頭部と胸部上部の鮮やかな黄色が特徴的です。唯一赤ちゃんに模様があるペンギンでもあり、生まれた直後から換羽を迎えるまで、 白・黒・グレーの三色をしています。成鳥はキングペンギンとよく似ていますが、キングペンギンは体長約90cmと、エンペラーペンギンと比べると小型で、胸部上部が橙色をしていることから区別できます。
【アドベンチャーワールド「SDGs宣言・パークポリシー」】https://www.aws-s.com/parktheme-sdgs/
アドベンチャーワールドは、「いのちを見つめ、問い続ける。いのちの美しさに気づく場所。」として、すべての生命にSmile(しあわせ)が溢れる豊かな未来の地球の姿をパークで体現します。パークという“小さな地球”を通して、関わるすべての人の人生が豊かになるように、動物たちの生命がずっとつながっていくように、自然や資源が循環し再生するように、未来のSmileを創り続けていきます。

【SDGsについて】
SDGsとは「持続可能な開発目標(Sustainable Development Goals)」のことです。社会が抱える問題を解決し、世界全体で2030年をめざして明るい未来を作るための17のゴールと169のターゲットで構成されています。2015年9月、ニューヨーク国連本部において193の加盟国の全会一致で採択された国際目標です。