
すし店『笹一』(和歌山市梶取)が9月27日、創業50年を迎える。
みなべ町出身の堀口徹社長は、田辺市や兵庫、大阪、東京、和歌山などで修業し、職人としての勤務を経て1975(昭和50)年、24歳で紀ノ川駅前にすし専門店として創業した。1977(昭和52)年には日本料理・仕出し部門を増設し、1981(昭和56)年に「向の芝店」(中之島)をオープンした。1985(昭和60)年に法人化。1989(平成元)年、現店舗に移転した。現在は約50人の従業員を雇用し、店舗や宅配、テイクアウト販売、オンライン販売を手がける。
同社によると、当時は珍しかった折り込みチラシの導入、すしの値段を時価ではなく一貫当たりの単価で提示、メニューに写真を掲載するなど、次々と新しい試みを取り入れてきたという。2012(平成24)年に「アセ」と呼ばれるイネ科のダンチクの葉で包んだ一口サイズのすし「紀州あせ葉寿司(ずし)」で、手を汚すことなく食べられるすし包装方法などの特許を取得。2013(平成25)年には、自然解凍で食べる「冷凍ずし」を10年かけて完成させ、押しずしや蒸しずし、棒ずしなど「加工ずし」と呼ばれるすしを全国販売するようになった。
9月27日は、50周年を記念し同店で初のイベントを開催する。「加工ずし」や当日限定のにぎりずし、オードブルを用意する。このほか、同店近隣の大谷地区に伝わる「大谷獅子舞」保存会の舞披露、和歌山を拠点に活動するシンガー・ソングライター「お寿司(すし)のともみ」さんのライブを行う。当日の店内は、和歌山県出身のアーティスト「石田延命所」さんが装飾を手がける。
イベントを企画した堀口社長の長女で総務部スタッフの中谷愛佳さんは「当店で長年続けている加工ずしの技術や食文化を知ってほしい。若い人やファミリー層にも歴史あるものと新しいものが融合して作り出す地元の魅力を感じてもらえたら」と話す。
堀口社長は「卵焼きは全て手焼き、しょうゆなども当店独自の調合で、当店ならではの味つけ、食感を大切にしている。加工ずしは手間も時間もかかり、現在では作れる職人も減ってきたが、日本の食文化として海外にも広められたら」と話す。「50年続けてきても、毎日が勉強の日々。今もすし以外の新しい商品開発を考えている。伝統として守るべきものは守りながら、時代に合わせてさまざまなことに挑戦したい」とも。
テイクアウト販売時間は9時30分~21時。店舗営業時間は土曜・日曜・祝日=11時~22時。