和歌山県立博物館(和歌山市吹上1)で現在、特別展「紀伊徳川家やきもの新時代 富国と栄華の19世紀」が開催されている。
紀州藩は19世紀初頭から1877(明治10)年ごろにかけて、需要の高まりや藩主の意向から陶磁器生産に注力した。同展では製作年が判明している作品を選び、時代背景や技術の変遷、同時期の窯同士のつながりなどを紹介する。「偕楽園(かいらくえん)焼」「瑞芝(ずいし)焼」など和歌山産の陶器や、輸送時に使われた緩衝材、陶器場を描いた挿絵など史料73点を展示する。
偕楽園焼は、茶の湯を好み表千家とも深い親交のあった十代藩主・徳川治宝(はるとみ)(1771~1853年)が、隠居所の西浜御殿(湊御殿丁付近)に窯を築き製作したことから紀州御庭焼とも呼ばれる。京都から楽旦入(らくたんにゅう)、永楽保全(えいらくほぜん)、仁阿弥道八(にんあみどうはち)などの陶工を招き作られた。青磁、染付などさまざまな種類の器が作られ、特にあさぎ色と紫色の交趾焼写しが特徴的で全国でも人気を博した。瑞芝焼は、鈴丸陶器所(畑屋敷新道付近)で生産され、質の高い青磁を得意とし、男山陶器場(有田郡広川町)の南紀男山焼と合わせて「紀州三大窯」と呼ばれる。
4月22日にはミュージアムトークが行われ、参加者からは「どれもきれいな色や模様だ」「陶器場を描いた挿絵を見ると、たくさん窯があったことや多くの人が分業して携わっていた様子がよく分かる」などの声が聞かれた。和歌山市在住の女性は「獅子の置物は毛並みが今にも動き出しそうで、家にほしいぐらい。お菓子入れの置物は、入れた物をより一層おいしく感じさせてくれそう」とほほ笑む。
同館学芸員の袴田舞さんは「『やきもの』から時代の変わり目やドラマが読み取れる。昔の人たちの身近にあった物を見ることで心を通わせてもらえたら」と話す。
開館時間は9時30分~17時。入場料は、一般=510円、大学生=300円。6月3日まで。