和歌山・岩出市を拠点に文芸活動をする草下敦司さんが4月、豆本の販売を始めた。
草下さんは和歌山市出身の39歳。中学2年時に人との接触に恐怖を覚えて外出が難しくなり、30代半ばまで引きこもりの生活を送ったという。その間、SFやミステリー、ホラー小説などを読み、自ら創作を開始。作品をインターネット上の小説サイトに投稿していた。2011年頃、引きこもりのケアを専門にする医師で和歌山大学名誉教授の宮西照夫さんと出会い、作品を介して人とコミュニケーションする醍醐味(だいごみ)を学んだ。インターネットでの作品発表と並行し、50冊を超えるフリーペーパーや文芸冊子を刊行。現在は県内の幼稚園や保育園で創作絵本の読み聞かせも行う。
豆本は縦6センチ、横5センチの手のひらサイズ。約40ページに自作の短編小説を詰め込んだ。表紙はボール紙、本文は上質紙を使い、装丁も草下さんがデザインした。1冊の製本は約30分。その後、手作業で切り絵などを施す。
草下さんは「豆本は軽くて手に取りやすく、かわいらしい。それでいて本格的な製本にも挑戦できる。工夫すれば風変わりな本も作れる。豆本は多様な魅力を備える『物語=ファンタジー』の器にぴったり」と話す。「宮西先生に導かれた外の世界は、1人で過ごす自室よりはるかに楽しい場所だった。転機を求める読者に経験を伝えたい」とも。
第1弾タイトルは「動物記」「芽吹き号」(以上400円)「胡蝶の夢」(500円)の3冊。ネットショップ「ものがたり屋」やイベント「一箱古本市」「文学フリマ」などで販売するほか、ダイワロイネットホテル和歌山で開催される「マルシェdeモンティ」にも出店する。