和歌山県立博物館(和歌山市吹上1、TEL 073-436-8670)で10月13日、特別展「西行 紀州に生まれ、紀州をめぐる」が始まった。主催は同館と西行学会。
平安時代の歌人として知られる西行の生誕900年を記念して企画した同展。西行にまつわる文化財やゆかりの地に残る文化財を一堂に集め、西行の業績と足跡をたどる。
西行は、1118(元永元)年に紀伊国田中荘(現・紀の川市)の佐藤氏一族の家に生まれ、義清(のりきよ)と名付けられた。京都で武士として仕えたが、23歳で出家し西行と名乗る。その後、高野山(高野町)や天野(かつらぎ町)で隠居生活を送りながら、旅に出て全国各地で歌を詠んだ。県内では「千里の浜」(みなべ町)や「那智の滝」(那智勝浦町)などを訪れ、歌を残している。
展覧会では、彫像や絵画、歌集、絵巻物など西行にまつわる資料184件282点を展示する(前期・後期で入れ替えあり)。展示は、西行直筆の書や歌集から読み解く「西行の人物像」にはじまり、西行の一族・佐藤氏が暮らしたふるさとの地、出家後に約30年間過ごした高野山やその間に巡った紀伊半島の各地、高野山を離れたあと過ごした讃岐、伊勢、河内、死後に残された物語、と西行の生涯とゆかりの地を巡る。
12日の開会式には、同館友の会や和歌山大学教育学部付属小学校6年生、資料の所蔵者、西行学会の関係者など約100人が参加。式後の内覧会では学芸員の坂本亮太さんが展示品の解説を行い、参加者らは熱心に聞き入り、メモを取ったり質問したりしていた。
坂本さんは「『新古今和歌集』に最多の94首が載り、歌人として高く評価される西行だが、確かな史料は少なく謎や伝説に包まれた人物。西行に関する事実から伝説まで幅広く集め、人物像を掘り下げる展覧会は全国的にも珍しいと思う。西行の意外な一面を知ってもらいたい」と話す。「西行は同じ時代に生きた人たちに影響を与え、亡くなってすぐ伝説となるほどの文化人だった。展示を通して西行やゆかりの地に思いをはせてほしい」とも。
会期中、連続講座「西行 再発見!」(20日・11月3日・10日・17日)や西行学会大会(27日)、ミュージアム・トーク(21日・11月23日・24日)などを行う。
開館時間は9時30分~17時。月曜休館。入館料は、一般=1,000円、大学生=800円。高校生以下・65歳以上・障がい者・県内在学の外国人留学生無料。前期展示=10月13日~28日、後期展示=10月30日~11月25日。