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和歌山・有田川町で「美男子が持ち帰った」伝統工芸「保田紙」の原料収穫始まる

コウゾや保田紙を使ったあんどんなどを持つ「体験交流工房わらし」の皆さん

コウゾや保田紙を使ったあんどんなどを持つ「体験交流工房わらし」の皆さん

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 和紙の原料になるクワ科コウゾの収穫が1月5日、有田川町の「体験交流工房わらし」(有田川町清水、TEL 0737-25-0621)周辺で始まった。

コウゾの収穫の様子

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 同地域では、コウゾを釜炊きや皮むきして樹皮を取り出し、天日乾燥させ手すき和紙「保田紙」の原料にする。例年1月から収穫を始める。

 保田紙は、江戸初期に同地域の大庄屋・笠松左太夫が紀州藩から製紙の命を受け誕生した郷土品の和紙。紙すきの技術を得るために、大和吉野に村の美男子3人を潜入させ、数年後に紙すき職人の女性を連れ帰ったことで同紙が誕生したという逸話が残る。

 最盛期には400軒ほどの紙すき屋が軒を連ね、和傘やうちわの材料として重宝されたが、洋傘の普及や1953(昭和28)年の紀州大水害による被害で、昭和40年代に廃絶の危機にひんした。1979(昭和54)年に「高齢者生産活動センター(現・体験交流工房わらし)」が開業し、再興された。現在は寺院や書家から注文があるほか、2015年の「紀の国わかやま国体」では表彰状に使われた。

 唯一の保田紙の紙すき職人・鈴木孝代さんは「保田紙は繊維がしっかりしていてとても丈夫。紙すきは繊細で難しいが、後世に伝えていきたい」と話す。

 紙すき職人を目指して東京から移住した菊地悠祐さん(26歳)は「伝統工芸に携わりたいと考えていて保田紙に出合った。よい和紙を作れる職人になりたい」と意気込む。

 同工房では、便せん、はがき、封筒、うちわなど保田紙関連の商品の販売、紙すきやうちわ・あんどん作りなどの体験ができる。

 営業時間は8時30分~17時。水曜・木曜・祝日定休。

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