医薬品をドローンで配送する実証実験が3月30日、和歌山県立医科大学紀三井寺キャンパス(和歌山市紀三井寺)で行われた。
実験は同大学と医薬品卸の「ケーエスケー」(大阪市)、情報通信サービスを提供する「NTTコミュニケーションズ」(東京都千代田区)が共同で取り組む。災害で道路が利用できない状況や平時の移動手段が限られる患者に、空を活用した医療品の安定供給体制の構築を目指す。
当日は、和歌川河川公園を出発した自律飛行のドローンが、和歌川上空を約1.5キロ飛行し、同大学図書館棟屋上に偽薬を配送した。ドローンに取り付けた輸送コンテナで、温度や湿度、傾きを管理し、医薬品の品質を保持。搭載したカメラで受領者の顔認証を行い、届いた偽薬に損傷がないことを確認した。
実験では、通行人や車両の有無を確認するチェックポイントを設け、ドローンパイロットや運航補助者を配置したり、ドクターヘリが優先して飛行できるよう調整したりするなど、目視内での自律飛行の実用性を確かめた。今回の実験で明らかになった課題を評価し、将来的に有人地帯での目視外飛行を目指すという。
同大学の上野雅巳教授は「災害時だけでなく、オンライン診療を利用する外出が難しい高齢者やへき地に、ドローン配送で医薬品や患者から採取した血液を運べるようになれば平時から役立つ」と話す。
ケーエスケー物流戦略部長の平谷洋さんは「今回は川の上を飛行したが、歩行者や幹線道路の上、長距離でも安全性や品質管理が担保できるかが今後の課題。検証を重ね、三者で課題をクリアしていきたい」と話す。