和歌山県在住の小説家・宇野碧さんが7月12日、小説「キッチン・セラピー」を講談社から刊行した。
和歌山県在住の小説家・宇野碧さんの小説「キッチン・セラピー」書影
宇野さんは1983(昭和58)年、兵庫県生まれ。2013(平成25)年に和歌山県に移住した。2022年に小説「レペゼン母」で第16回「小説現代長編新人賞」(講談社主催)を受賞した。同作は和歌山県の梅農家を舞台に「ラップバトル」を絡め、親子愛を描いた。
2作目の「キッチン・セラピー」は、森の中にある「くすりを一緒につくるキッチン」町田診療所を舞台にした物語。決断する力を失い人生に迷う学生、仕事と子育てに追われて自分の好きなものを忘れた女性、友人とのライフステージの変化に悩む女性医師など、さまざまな悩みを抱える人たちが訪れる。登場人物たちが「食」を通じて本当の自分を取り戻していく姿を描く。
宇野さんは「料理からは、人生で必要なことをたいてい教わることができるんじゃないかと常々考えていた。食や料理を題材にした小説はたくさんあるが、その人だけにしか作れない味があるように、唯一無二の小説になった」と話す。「和歌山県という食材を生み出す自然が身近な場所に住んでいることが執筆にも生きた。料理から生きることへの新たな視点を得て、読んだ人の滋養になる一冊になれば」とも。
四六変型、298ページ。価格は1,870円。