和歌山県立近代美術館(和歌山市吹上1、TEL 073-436-8690)で3月14日、若手芸術家5人による展覧会「和歌山と関西の美術家たち リアルのリアルのリアルの」が始まった。
1970年~1980年代生まれの若手芸術家5人が手掛ける作品合わせて46点を展示する同展。
出展作家は、有田市出身で油絵画を制作する伊藤彩さん、和歌山市出身で陶芸作品を手がける大久保陽平さん、奈良市出身で立体作品や写真を用いた表現に取り組む岡田一郎さん、鉄を使った大型作品を造形する君平(くんぺい)さん、和歌山市出身の油彩画家・小柳裕一さん。展示初日は5人が自分の作品を解説するトークイベントを開き、参加者約50人が集まった。
伊藤さんは独自のキャラクターを大胆な色使いでカラフルに描いた壁画の前で「昨年、打ち合わせで美術館を訪れた時、大きな壁画を描きたいと思った。その一心で描いたら、わけがわからん作品になった」とトークでも独自の世界観を展開し、聴衆の笑いを誘った。何を描いたのかを問われると、キャラクターそれぞれに名前があると紹介し、「学生時代から今までの作品を詰め込んだ集大成」と話した。
大久保さんは、一見すると台所用のスポンジに見える作品「SUPONJI」について「実は全部、土で作っている」と明かし、会場の人々を驚かせた。スポンジに磁土(磁器の原料となる土や粘土)を染み込ませて焼くことで、ナイロンが溶けてスポンジの形の作品ができるという。「さまざまな形のスポンジを再現するために、たくさんのスポンジを買い集めた」と苦笑いしながら解説する大久保さん。ほかにも鋳込み(いこみ)と呼ばれる技法で、掃除道具などの日用品の型を取った陶芸作品を紹介しながら、「生活の中に隠されたメッセージをテーマにしている。掃除道具を選んだ理由は、東日本大震災でエネルギー問題について考えたのがきっかけ。がれきを片づけるのにもエネルギーが必要。何もできない自分の無力さを感じた」と作品に込めた思いを話した。
岡田さんの作品は、砂の上にスピーカーを置いて犬の鳴き声を再生する「empty landscape #2」。「自分が生まれ育った住宅街を表現した。写真よりも集音する方が、その場所の特徴を捉える良い手段だと思う。住宅街で耳を澄ましてみると無音で、時々犬の鳴き声だけが聞こえた」と作品制作のきっかけを説明する。
開館時間は9時30分~17時(最終入場=16時30分)、月曜休館(祝日の場合は翌日)。観覧料は、一般=510円、大学生=300円、高校生以下および65歳以上無料。5月10日まで。