高野町の花坂観音堂(高野町花坂)に3Dプリンターで製作した「阿弥陀如来坐像」の複製が安置され1カ月がたった。
県立博物館(和歌山市吹上1)の文化財防犯対策の取り組みとして2012年から始まり、県内で10カ所目、21体目となる同像。和歌山工業高等学校(和歌山市西浜3)産業デザイン科の生徒7人が選択制授業として仏像を3Dプリンターで複製。和歌山大学(和歌山市栄谷)教育学部美術教室の学生3人が着色を担当して「お身代わり」を製作した。本物の仏像は同館が保管する。
学芸員の大河内智之さんは「県内のお堂や自社で仏像などの文化財の盗難被害が相次いでいる。その多くが小さな集落で、住職がおらず、高齢化や人口減少で管理が行き届かないお堂だ。花坂観音堂でも2011年に仏像の盗難が発覚していまだに見つかっていない」と話す。
和歌山工業高等学校の児玉幸宗教諭は「仏像をスキャンして、CADでデータを修正する作業は地味で他の授業と比べて希望する学生が少ないが、できあがった複製を届けると地域の人たちはとても喜んでくれる。その様子を見て生徒たちは『やってよかった』と達成感を感じて自信をつける。自分たちの技術が人の役に立つことを体感できて教育効果も高い」とほほ笑む。
大河内さんは「3Dプリンター製の『お身代わり』は本物そっくりで近づいて見ないと分からないほど。地域住民も『これで安心して寝られる』と笑顔を見せてくれた。今後も地域で連携して大切な文化財を継承していきたい」と意気込む。