和歌山・城北小学校内の鷺ノ森遺跡で1月18日、発掘経過報告と出土品展示のため現地説明会が開かれ、約350人が訪れた。主催は和歌山市教育委員会と和歌山市文化スポーツ振興財団。
同遺跡は和歌山城の東北部、鷺ノ森地区にある弥生時代後期から江戸時代のもの。2017年開校予定の小中一貫校建設にともない、約1200平方メートルの範囲で発掘調査が行われている。調査は2012年10月から始まり、現地説明会は昨年3月に続いて2回目。
今回公開されたのは、戦国時代末期に造られたとみられる大規模な堀跡や中世末~近世初頭の遺構面(生活面)、10世紀ごろの地層から見つかった仏具「鰐口(わにぐち)」など、弥生時代から江戸時代までの出土品。
堀は浄土真宗「鷺森御坊」があった場所の外に造られており、織田信長による紀州征伐を防御する外堀とみられる。掘の幅は16メートルあり、当時の堀としては最大級という説も。堀の中からは、タイやベトナムなど海外から伝わった物も出土している。
青銅製の仏具「鰐口」は、僧侶が携行していたと思われる9世紀末から10世紀初頭のものと推定される。和歌山市によると、「長野県松本市で出土した『1001年』と記された鰐口より古いため国内最古級とみられる」という。
学芸員の井馬好英さんは「この辺りには弥生時代から現代まで、ずっと人が安定して住み続けている。地盤が安定しており、大きな災害にあった形跡もない。港が近いことも、この土地に人が集まった要因のひとつだろう」と話す。「古墳時代から江戸時代までの生活の流れがうかがえる。非常に貴重な史料」とも。
説明会に来ていた近所に住む60代の女性は「前回の説明会にも来た。人は数十年しか生きないのに、古墳時代からずっと人が住んで生活しているのを目の当たりにして、不思議な気持ちになった」と話す。
現地説明会の配布資料は、調査機関の和歌山市文化スポーツ振興財団ウェブサイトでダウンロードできる。