和歌山県庁(和歌山市小松原通1)で4月15日、本館建築80周年を記念した見学会が開催された。
同庁舎は1938(昭和13)年に建設された鉄筋コンクリート造り地上4階、地下1階建てで今年80周年を迎えた。現役で利用される庁舎の歴史や魅力を紹介しようと、県教育委員会と県建築士会が竣工(しゅんこう)式に合わせ見学会を開催。約250人が参加した。
現在の庁舎本館は3代目。初代庁舎は1876(明治9)年に建設された木造2階建てだったが、火災で焼失。1889(明治22)年に再建された2代目庁舎の時に、老朽化などを理由に西汀(みぎわ)丁から現在の小松原通に移転した。3代目庁舎は震災や戦争などの非常時にも十分に機能するように鉄筋コンクリート造りの第一人者であった内田祥三(よしかず)による監修の下、増田八郎が意匠設計を、坪井善勝が構造設計を担当。以後、1945(昭和20)年の空襲に耐え、1947(昭和22)年の昭和天皇の行幸、2011年の耐震改修工事などの歴史を歩み、2013年には国の登録文化財に指定された。
見学会では、参加者20人が1組になって担当者と共に庁舎内外を巡った。議場の議員席に座ったり、表彰式などが行われる正庁や知事室を見学したりしたほか、紀の川市出身の保田龍門によるレリーフがある階段ホールで説明を聞き、写真撮影や質問のやり取りを熱心に行った。
外観を見学していた参加者が「富山県庁と似ている」と質問すると、担当者は「増田氏は富山県庁舎の設計にも関わった」と答えた。「空襲で焼夷(しょうい)弾が数十発投下され、跳ね返った弾で一室が燃えてしまったが、職員の必死の消火活動で焼失は免れた」と説明すると参加者は感嘆の声を上げた。
和歌山市在住の女性は「普段は県庁職員が働いているので見られないが、今日はさまざまな場所を回って話を聞けた。震災に強い建築で、現役で使われていることが素晴らしい」と話していた。