JR宮前駅近くにある和歌山朝鮮初中級学校(和歌山市中島)で11月3日、創立60周年記念祝典が行われた。
同校は、日本で生まれ育ち朝鮮半島にルーツを持つ在日朝鮮人3世・4世の子どもたちが通う県内唯一の朝鮮学校。1953(昭和28)年に初島・箕島・湯浅・田辺・南部・新宮に設立した午後夜間学校を前身とし、1958(昭和33)年に6校を合併した「和歌山朝鮮第一初級学校」(箕島)を設立した。和歌山市内の「和歌山朝鮮第二初級学校」と1961(昭和36)年に合併し、中等部を設置。現在の校舎は1973(昭和48)年に移転し、幼稚班を併設した。現在の生徒数は幼稚班、初級部(小学校)、中級部(中学校)をあわせて39人。60年間の卒業生は422人。
文部科学省の学習指導要領に準じた朝鮮語の教科書で授業を行うほか、日本語や英語、朝鮮の歴史、地理、文化と伝統を教える。近隣の小中学校とは文化・スポーツなどで交流し、夏の納涼祭には近隣住民も訪れる。最近は音楽・文化活動を地域で披露する機会が増えている。
当日は1部で記念式典・公演を行い、約350人が参加。公演は、園児・児童・生徒、保護者などの合唱や舞踊、演奏など12演目を披露した。民族楽器の砂時計形の細腰鼓(さいようこ)「チャンゴ」をオモニ(母親)会が朝鮮民謡「アリラン」に合わせてたたくパフォーマンス、12弦の箏(こと)「カヤグム」の重奏を中級部カヤグム部の女子生徒4人が、民族打楽器「チャンゴ」「プク」「ケンガリ」「チン」の重奏を中級部生徒9人が、それぞれ民族衣装を身にまとい発表した。そのほか教員が同校の歴史を小演劇で上演した。
2部の祝賀宴会では、オモニ会手作りのチャプチェやチヂミ、祝いの席には欠かせないという「トッ(餅)」や「チャルパ(赤飯)」などを振る舞った。ステージでは大阪朝鮮歌舞団が歌や踊り、プクを使った演舞などで会場を盛り上げたほか、卒業生と歴代の教諭の紹介を行った。園児・児童が民俗芸能の踊り「農楽」を披露し、出演者と参加者が一緒に会場内を踊り歩き、手をつないだり、前の人の肩に手をかけたりして、列になり会場に輪を作って駆け回ると笑いと歓声が上がった。
朴志晙校長は「60周年の節目を子どもたち、先輩たち、参加された皆さんが同じ気持ちで祝うことができて感慨深い。70周年、80周年向けてさらなる決心ができた。これからも人と人とのつながりを作り、自校をたくさんの人に知ってもらい、70年80年を迎えたい」と話す。