今年の干支(えと)にちなみ、ウシ科のカモシカにスポットを当てた企画展「特別天然記念物 カモシカに大接近」が現在、和歌山県立自然博物館(海南市船尾、TEL 073-483-1777)の第2展示室で開催されている。
同展ではカモシカの全身骨格標本1点と頭の骨格標本3点、比較用にニホンジカの頭の骨格標本3点を展示。カモシカの角は雌雄ともに生え変わらないことやニホンジカは上顎(じょうがく)に犬歯があることなどを紹介する。このほか、カモシカの写真、ニホンジカとの特徴の違いや特別天然記念物になった経緯を解説したパネル4点を展示する。
カモシカは偶蹄目(ぐうていもく)ウシ科の動物で、本州、四国、九州に生息する日本固有の哺乳類。岩場や急斜面のある森林に住み、低木の葉、芽、小枝、花、実などを食べる。九州、四国、紀伊山地、鈴鹿山地のカモシカは、環境省レッドリスト2020年で「絶滅の恐れのある地域個体群」に指定されている。
カモシカとニホンジカの骨格標本の展示は、身体的特徴や分布状況を解説。県内のカモシカの死亡例を紹介するパネルには、病気や崖からの転落のほか、交通事故や害獣侵入防止用の網によるものなど、人間の活動に起因する事故等が143件中72件と半数を占めることを説明する。館内の「保全上重要なわかやまの自然」コーナーでは、ツキノワグマやクマタカなどとともにカモシカの剥製を展示する。
学芸員の佐々木歩さんは「カモシカの骨格標本や角の鞘(さや)から、けがをした形跡や年齢を推定できる。ニホンジカの骨格標本と見比べ、生態の違いを観察して楽しんでほしい」と話す。「報告してくれる人が多い可能性もあるが、和歌山はカモシカの死体発見数が多い。日本固有の動物であるカモシカに思いをはせ、人間の活動による動物たちの事故防止に目を向けてほしい」と話す。
開館時間は9時30分~17時。月曜休館。入館料は、大人=480円、高校生以下・65歳以上・障がい者無料。12月28日まで。