「新収蔵 奈良原一高の写真」が現在、和歌山県立近代美術館(和歌山市吹上1、TEL 073-436-8690)で開催されている。
奈良原一高が写した和歌山刑務所(「壁の中(『王国』より)」©Narahara Ikko Archives)
写真家・奈良原一高は、1931(昭和6)年福岡県生まれ。早稲田大学大学院在学中の1956(昭和31)年に、桜島噴火で埋没した黒神村(鹿児島県)を撮影した「火の山の麓」と軍艦島(長崎県)を写した「緑なき島」の二部作から成る写真展「人間の土地」でデビューした。1958(昭和33)年には、和歌山刑務所(和歌山市加納)とトラピスト修道院(北海道)を撮った「壁の中」「沈黙の園」の二部作「王国」を発表した。2020年没。88歳だった。
同展は、「人間の土地」「王国」の写真に加え、廃墟になった軍需工場シリーズ「無国籍地」の写真と合わせ95点を展示する。
関連イベントとして、3月11日と4月8日の14時から、学芸員による展示解説を開催。3月19日には、島根県立美術館主任学芸員の蔦谷典子さんを招き、講演会「壁 奈良原一高『人間の土地』から『王国』へ」を開く。
同館学芸員の奥村一郎さんは「奈良原一高は戦後日本を代表する写真家の一人。敗戦後、どのように生きていくか模索する中でさまざまな状況下で暮らす人々を撮影した。静かな写真の中から、語りかけてくるたくさんの声に耳を澄ませてほしい」と話す。「2階で作品を展示する版画家・池田満寿夫とも活動を共にしていたことから、今回は2人の展示を同時期に開催している。ぜひ併せて鑑賞してほしい」と呼びかける。
開館時間は9時30分~17時。月曜休館。観覧料は、一般=350円、大学生=240円、高校生以下、65歳以上、障がい者、県内在学中の外国人留学生無料。5月7日まで。