加太春日神社(和歌山市加太)で5月21日、「加太えび祭り」が行われた。
昨年は人手不足により「渡御(とぎょ)行列」を行わなかった同祭。今年は地元住民に加え、ほかの地域からも参加者を募集し、重さ約1トンの大みこしを担ぐ「みこし連」に102人が集まった。みこしのほか、獅子舞、鬼舞など伝統芸能からなる渡御行列には加太各地区の青年団や子どもたちが中心となり総勢500人が参加。汗ばむ陽気の中、元気な声が町に響いた。
同祭は、かつて伊勢エビ漁が盛んだった同地域でエビを供物にしたことから「えび祭り」と呼ばれるようになった。古くは旧暦4月20日のエビ漁の解禁に合わせて行われたという。現在の例大祭は毎年5月20日に行われ、5月第3土曜日に町を挙げて行われる渡御を「えび祭」と呼んでいる。
渡御祭は1597(慶長2)年に獅子頭2頭が奉納された記録が残っており、その獅子舞が「向丁の獅子舞」に引き継がれたという。その後1921(大正10)年に現在のみこしが完成し、翌年からみこし渡御が行われるようになった。
その後、戦争やさまざまなトラブル、近年ではみこしの担ぎ手不足などの理由で何度も中断されてきたが、祭りを残したいという氏子・住民らの要望により規模を縮小しつつも復活。青年団を中心に伝統芸能の復活を目指し、現在は保存会の立ち上げも検討している。
当日は巫女(みこ)による舞の奉納や、はやしに合わせて獅子舞を披露し、みこしが出発した。みこしに続いて獅子舞、踊り、小唄、なぎなた持ちが連なり、大谷川橋を渡って淡島神社前の旧道を練り歩いた。4人ずつが赤鬼と青鬼になって戦いの舞を披露する「鬼舞」も12年ぶり復活し、力強い舞に見物客から大きな歓声が上がっていた。「鬼舞」は無病息災を願って行うもので、鬼たちは道を歩く人たちに金棒の先端をかぶせる「厄落とし」を行っていった。
同祭実行委員長の藤井保夫さんは「祭りは伝統文化の継承でもあるが、町ぐるみで取り組むことで、子どもたちの健全な育成にもつながっている。今年は例年よりも多くの人が見に来てくれてうれしかった。これからも地域で盛り上げていきたい」と話す。