NPO法人「白浜レスキューネットワーク」(西牟婁郡白浜町)代表理事の藤薮庸一さんの著書「あなたを諦めない 自殺救済の現場から」が2月7日、「いのちのことば社」(東京都)から刊行された。
白浜バプテストキリスト教会の牧師でもある藤薮さんは、先代牧師の江見太郎さんが1979(昭和54)年に始めた自殺志願者の保護活動を引き継ぎ、同法人を立ち上げ活動を続ける。
同町の50メートルの断崖「三段壁」は「恋人の聖地」に登録される観光地だが、毎年多くの自殺志願者が訪れる。同法人は三段壁周辺に「重大な決断をするまえに一度是非ご相談ください 連絡をお待ちしています」(原文ママ)と書いた看板を立て電話番号を掲示し相談に乗る「いのちの電話」や地域住民と連携したパトロールなどを行い、これまでに900人以上を保護してきた。
同法人では、保護した人の自立に向けた事業として宅配弁当店「まちなかキッチン」を経営。藤藪さんは、保護した人たちに同店で調理・配達・受注などの仕事を依頼する。そのほか教会で学童保育事業を行い地域の子どもたちと交流を持つ。
同書は牧師として、経営者として、父として、それぞれの立場での考えや苦悩、喜びをつづったエッセー集。保護した人々との共同生活では、自暴自棄だった人が新しい仕事に向き合い変わっていく様子や好きになれない人との向き合い方など、エピソードを交えて紹介する。
藤薮さんは「日本では年間2万人以上が命を絶っている。『もうダメだ』と諦めてしまう人が大勢いる。私は誰一人として死んで良い人なんていないと思う。ひとり一人の声を聞いて、寄り添い、その人を信じたい。この本には私が今まで何をしてきたのか、なぜするのか、そしてこれから何ができるのかを書き連ねた。生き方に悩む人や自殺問題に向き合う人、将来に悩む若い人などたくさんの人に手に取ってほしい」と話す。
ソフトカバー、196ページ。価格は1,512円。
※出版社名に誤りがあったため訂正しました(2月22日 9:00訂正)