桃の節句の恒例神事「ひな流し」が3月3日、加太の淡嶋神社(和歌山市加太)で行われた。
紀州徳川家でかつて、姫君が誕生すると初節句に同神社に一対のひな人形を奉納したという慣習が発祥の同行事。人形供養の神社としても知られ、同神社には今年も約5万体のひな人形が送られてきた。同神社は全国の流しびなの行き着く先で、ここから神々の国に旅立つとされている。
当日は、5000体の女びなと男びなが並べられた本殿で「雛納祭」が行われ、清めのおはらいや祝詞奏上の後、みこが願い事が書かれた形代(かたしろ)とひな人形を白木製の二そうの舟に乗せた。人形を乗せた舟を一般参加の女性たちが運ぶ「雛舟の渡御」は、昨年に続き、新型コロナウイルスの影響で中止し、車で運び、海に浮かべた。宮司の祝詞奏上の後、紙吹雪をまき、木舟を流し、参拝者らがその様子を沿岸から見守った。
女児を連れた和歌山市内の男性は「娘の初のひな祭りなので、初めてやって来た。コロナ禍だが開催されてよかった。健康に育ってほしい」と笑顔を見せる。撮影に訪れた和歌山市内の女性は「天気に恵まれて良かった」とカメラのシャッターを切っていた。
宮司の前田智子さんは「今年は来られなかった遠方の人の願いも込めてお祈りをした。昨年に続き、疫病退散の願いも込めた」と話す。