「きのくに線サミット2024」が2月10日~12日、新宮市役所別館(新宮市春日)で開催された。主催は和歌山大学の学生団体「きのくに線活性化プロジェクト」。
学生たちが企画し、JR西日本和歌山支社など、地元企業の協力で実現した同イベント。「地域交通の未来を考える」をテーマに、学生を中心にローカル線や地域活性化に関心がある30歳以下の40人が参加した。ゲストは、鉄道をテーマにする動画配信者「西園寺」さん。特別列車を使ったフィールドワークやグループワークなど、3日間のプログラムを通じて地域交通の活性化案を考えた。
1日目は、「地域交通の理論と議論」がテーマ。和歌山大学の西川一弘教授が「地域交通とまちづくりを接続する」と題し基調講演を行った。西川教授は「ローカル線を廃線にしないでほしいという思いだけでなく、住民が地域の具体的な未来図を描き、鉄道の価値を考え、こんな街にしたいから鉄道を存続させたいという議論をしてほしい」と訴えた。「地域交通のコンテンツ化」をテーマにしたディスカッションでは、西園寺さんが登壇し、公共交通で全国を回った経験を基に意見を述べ、参加者の質問に答えた。
西園寺さんは「地域のプロモーションでは、地元住民が見せたいものと観光客が見たいものが違うこともある。土地勘がない人も多いため、分かりやすく魅力を伝える工夫や企画など、ニーズのすり合わせが大切。きのくに線は、美しい海が見える車窓と大阪や名古屋など都市から近いことがポイント。『紀伊半島一周してみた』などの動画を撮りたい」と話す。
2日目は、2両編成の特別貸し切り列車「きのくに線うみびらき号」を新宮駅から周参見駅まで往復運行した。車内では地元住民を招いたトークショーを開き、停車駅では駅舎や周辺地域を見学した。那智勝浦町から家族連れで参加した女性が「子どもたちにとって電車は見るだけのもので、今回初めて乗った。車移動が主流で、小学校では電車の乗り方を教えている」と話すと、参加者たちは驚きの表情を浮かべていた。
3日目は、「わたしたちの地域交通ビジョン」を参加者がグループごとに発表。参加者からは「地域交通は地域の人のためにあるもの」「今後地域交通を考える場をどのように作っていくか」「価値を伝えるためにどうするか」などの意見があった。
同団体代表の宮井凜晴さんは「1日目の講演で基礎を学び、2日目のフィールドワークで地元の人の声を聞き、現地の空気を肌で感じることで、初めて紀南に来た参加者もリアルに考えられた。地元の高校生と県外の大学生・大学院生が同じテーブルで、内と外からそれぞれの視点で議論ができた」と話す。「今後きのくに線だけでなく全国各地で、若い人たちがポジティブに考える機会が広まったらうれしい」とも。