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日本トルコ合作映画「海難1890」公開 初日動員数、和歌山で今年1位に

上映後の舞台あいさつで質疑応答する田中光敏監督

上映後の舞台あいさつで質疑応答する田中光敏監督

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 和歌山県内の5館で12月5日、日本・トルコ合作映画「海難1890」公開され、初日動員数6247人で県内の今年最多数を記録した。初日の興行収入は689万円(5館合算)。

「海難1890」のエルトゥールル号の乗組員を必死に治療するシーン

 日本とトルコの2つの史実を描いた同作品。そのうちの1つ、1890(明治23)年に串本町樫野崎沖で起こった「エルトゥールル号海難事故」では、座礁した軍艦の乗組員587人が殉職する惨事となったが、紀伊大島の住民による懸命な救助活動で69人が一命を取り留めた。

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 撮影は実際に同町で行われ、救助に参加した町民の子孫がエキストラとして出演。日本人キャストは内野聖陽さん、忽那汐里さん、トルコ人キャストはケナン・エジュさん、アリジャン・ユジェソイさんなど、両国の俳優陣が演じた。

 公開2日目の12月6日には、ジストシネマ和歌山(和歌山市松江)で田中光敏監督の舞台あいさつが行われた。「初日動員数1位」の発表に、観客からは盛大な拍手が送られた。

 田中監督は「利休をたずねよ」でモントリオール国際映画祭ワールドコンペ部門最優秀芸術貢献賞を受賞。本作を手掛けたきっかけは10年前、大学の同級生だった田嶋勝正串本町長からもらった手紙だった。

 田嶋町長によれば、14年前、町長室にある「開かずの金庫」からトルコ人53人の診断書と、トルコからのお礼に対する返信の手紙の控えを発見。内容は、治療費の支払い申し出たトルコ側に対し、金銭の受け取りを断り、遭難した人への援助を要望するものだった。この手紙に感動した田嶋町長が、10枚にわたる手紙を田中監督に宛てたという。

 「ジストシネマ和歌山」(和歌山市松江)で上映後、観客の前に立った田中監督は「田嶋町長に手紙をもらってからここに立つまで10年かかってしまった。1通の手紙から始まり、多くの人が賛同してくれて、国家プロジェクトにまでなった。一番すごいのは、125年前に命懸けでトルコ人を救った名もなき和歌山の人たちの善意が、時代を超えて国と国を結びつけたことだ」と話す。「本作はリレーでいう『バトン』のような作品。人が人を思う、プラスの連鎖を次の世代に伝えていきたい。もし心に届いたなら、周りの人にも伝えてほしい」と呼び掛けた。

 映画館を訪れた和歌山市内在住の男性は「忘れていたものを思い出させてもらった。友情の大切さ、人を思いやる心だ。日本人に生まれてよかった。和歌山県の人に見てほしい。さっそく職場でも勧めたい」と笑顔を見せていた。