和歌山市立加太小学校の体育館(和歌山市加太)で6月30日、加太の地域ブランディングを考えるシンポジウム「地域ゼミ」が開催された。主催は東京大学生産技術研究所川添研究室。
同研究室は、2014年から加太地域で空き家問題などの地域課題解決や「デザイン」による産品・まちづくりの魅力向上などの研究を開始。今年5月に和歌山市と協定を結び、漁業用の蔵を改装した加太分室地域ラボを開設した。開室を記念して地域ブランディングをテーマに基調講演とパネルディスカッションを行った。
当日は地域住民も含め240人が参加。尾花正啓和歌山市長は冒頭で「加太は文化と歴史があるが、高齢化・空き家率も非常に高い地域でもある。地元で捕れるタイは非常においしく、関西国際空港からも近いので、観光地としてポテンシャルも高い。本日は一流の講師の方々と、地域の皆さまと一つになり加太の魅力について発信する記念日になる」とあいさつした。
基調講演は、「グラフ」(兵庫県加西市)社長の北川一成さんがブランディングをテーマに、経営者とデザイナーの双方の視点から話をした。北川さんがブランディングを担当した「変なホテル」の事例を紹介し「ブランディングする時は覚悟が必要。一つ筋が通ってないとブランドの良さは絶対に伝わらない。街の良さを広めていくためには1人ではなく、全員がそれぞれの立場で伝えていく一体感が必要だ」と話した。
パネルディスカッションは、東京大学生産技術研究所の准教授・川添善行さんがコーディネーターを務め、新丸の内ビルディング(東京都千代田区)7階のレストランフロア「丸の内ハウス」統括マネジャーで、地域のブランディング・商品・メニュー開発を手掛ける玉田泉さん、丸の内ハウスでレストラン「musmus(ムスムス)」などを手掛け、日本各地の生産者と消費者をつなぐ「テーブルビート」(大阪府大阪市)社長の佐藤としひろさん、北川さんが加わり3人が加太の「地域ブランディング」をテーマに意見を交わした。
佐藤さんは「コミュニティーの中でさまざまな世代の人と交流するのが大切だ。空いた場所で地元民・観光客・世代を超えた方と交流できれば、新しい何かが生まれるきっかけになる」と話す。玉井さんは「おいしいタイをただ提供するのではなく、『鯛丼』用のタレを開発し、レシピを公開して加太のどの店でもおいしい鯛丼が食べられるようにするなど、みんなで同じ方向を向いた名物を作り、魅力を生かしていくのが有効だ」と話す。
北川さんは「一本釣りのタイの魅力をどう伝えるか。地元の人からしたらおいしいのは当たり前で、一つのメニューをどうデザインして外に伝えていくかが重要だ」と課題を見据えた。