写真家・松原時夫さんの写真集「水辺の人」の出版記念写真展が現在、「ギャラリーTEN(テン)」(十一番丁、TEL 073-432-5600)で開催されている。
松原時夫さん初の写真集「水辺の人」(撮影=宮脇書店和歌山店)
松原さんは1940(昭和15)年和歌山市生まれの81歳。海まで徒歩1~2分の和歌浦で育った。11歳の時に菓子のおまけで手に入れたというカメラで撮影を始め、1955(昭和30)年、中学3年の時から和歌浦の風景を撮影し続けている。松原さんは1961(昭和36)年から大阪の写真専門学校に通い、卒業後は同校で3年間、講師も務めた。その後、和歌山で写真館「松原フォトサービス」を起業し、約50年間営業した。
写真集「水辺の人」(10,000円)は松原さんが1955(昭和30)年~1969(昭和44)年にかけ、新和歌浦、田ノ浦、雑賀崎で人々を撮影したモノクロ写真90点を収録する。当時盛んだったという、のり店、漁師のなりわいや、旧正月の祝い行事での子どもたちの様子、雑賀崎地域の風習で頭に荷物を乗せて運ぶ女性の姿など、海からの恵みで生計を立てる人々の営みがうかがえる。発行は「道音舎」(十番丁)。
第1集に続き、第2集は和紙を使い、片男波から撮った沖之島をカラーで、第3集は砂浜が描く模様をモノクロで刊行する。松原さんは現在も和歌浦の写真を撮り続け、昨年の撮影は年間550回におよぶ。撮影は全てネガフィルムを使い、11歳の時に最初に撮った母親の姿も保存するなど、これまで撮影したフィルムは全て保管しているという。
松原さんは「いつか写真集を出せたらと考えていたが、生きている間に出せるとは思わなかった。和歌浦で働く人たちの姿に心引かれてシャッターを切った。モノクロフィルムで印画紙に焼き付ける際に中間色が出るようにしている。濃淡の印象を保って出版でき、うれしい」と話す。「撮り続けるコツは被写体を近くで見つけること。海はいくらでも撮るものがある。なぎさも潮の満ち引きでも浜の様子は変わる。海草や流木、渡り鳥など、変化に富む。人のなりわいが変わっても、干潟は万葉の時代から変わらない。毎日行っても見飽きない。死ぬまで和歌浦を撮り続けたい」とも。
開催時間は11時~17時。火曜休廊。2月28日まで。
※写真集名に誤りがあったため修正しました(2021年2月20日 22:00修正)。