公益社団法人 難病の子どもとその家族へ夢を(東京都中央区、代表理事:大住 力)は、2026年7月10日(金)から12日(日)の3日間、高野山において「ウィッシュ・バケーション@高野山 2026」を実施しました。
高野山でのウィッシュ・バケーションは、これまでも開催を重ねてきました。開創から1200年以上にわたり祈りが積み重ねられてきたこの聖地は、私たちにとって、何度でも立ち返りたい場所です。
難病と共に生きるご家族の日常には、いつも「いのち」と向き合う時間があります。だからこそ高野山では、静けさの中で自分自身と、そして家族と向き合う時間を届けたいと考えてきました。
杉木立に囲まれた参道を歩き、僧侶の言葉に耳を傾け、写経に一心に向き合う――そうした静かな体験の先に、ご家族はきっと、日常に持ち帰ることのできる何かを見つけてくださるはずだと。
奥川さん家(2名)、矢野さん家(3名)の両家族が、この3日間を共にしました。

■ 杉木立の中で、旅がはじまった
晴天の中、両家族が元気に高野山入りしました。
早速、金剛峯寺では、高野山真言宗総本山金剛峯寺社会人権局の雨貝さんの案内のもと見学がスタートしました。高野杉の年輪に触れ、その歴史と大きさに家族から驚きの声があがりました。「永遠に守り続けなければならない最上最尊の峯」を意味する経典『金剛峯楼閣一切瑜伽瑜祇経』が、この寺号の由来であるとの説明もいただきました。
防火のために廊下を川に見立てた建築の知恵、明治期に名を改めた経緯――ひとつの建物に幾重にも積み重なる物語に、家族一同が引き込まれていきました。
宿坊「成福院」到着後の夕食会は、両家族みんなにとって初めての精進料理。そして、空くんの誕生日を祝う特製ケーキが振る舞われ、みんなでお祝い。ケーキを食べながら、写経の準備をする段階からすでにご家族同士は打ち解けて会話をされていて、静けさの前にすでに物語は動き出していました。
そして夕食後、一列に並んでの般若心経の写経に、実に1時間、誰もが無言で集中しました。灯りの下で筆を運ぶ音だけが響く時間です。
書き上がった写経を互いに見せ合いながら、「仕上がりには、心が現れているようですね」と矢野さんのお父さん。奥川さんからは、写経の中に「空(くう)」の字がたくさん出てきたことが印象的だった、との声もありました。
一日の終わりに、静けさと賑やかさ、その両方がこの日の中に共にありました。




■ 「仏心は、皆の心にある。」
2日目の朝、清々しい空気の中でお勤めが始まりました。ご本尊に手を合わせる家族に、住職から「高野山は、長い年月にわたる多くの人々の祈りによって、霊験の空気が宿る場所。心のお土産をお持ち帰りいただければ」というお話がありました。
この日、金剛峯寺では高野山高等学校インターアクトクラブの生徒さん6名が合流しました。顧問の榊原啓優先生のもと、生徒たちは事前に「どうやってご家族を迎えようか」を話し合い、手作りのうちわで両家族を歓迎してくれました。
宗教科3年の高岡隆仁さんは袈裟姿で参加し、空くん・新くんが実際に袈裟や坊主頭に触れさせてもらう場面もありました。
三鈷の松(さんこのまつ)の前では、空海開山の原点について、そして「慈悲とは誰かを大切に思う気持ちであり、誰かに教えられるものではなく、誰もが生まれながらに持っているもの」というお話をうかがいました。金堂では、八供養菩薩がそれぞれ「できること」で慈悲を表しているという説明に、家族も高校生も深くうなずく場面が。




仏像にさほど関心のなかったという空くんも、「それぞれに意味があると知って興味深かった」と話してくれました。授戒では、「戒(かい)」とは良心の働きであり、他者を生かすことに自分自身も心地よさを感じる"仏心"が、誰の心にも本来備わっているという教えをいただきました。

大師教会では、両家族・高校生が集う大きな昼食のテーブルを囲みました。
地元のお寺のご子息である部長・楠公博くんは、慣れ親しんだ金剛峯寺で「改めていろいろな話が聞けてとても良い機会になった」と語り、奥川さんのお母さんと進路の話で盛り上がる場面も。生徒会長で吹奏楽部部長の山西百愛さんの案内で、空くんのために誕生日の歌をみんなで合唱。「連日お祝いしてもらったから、当日はいいかな(笑)」と奥川さんのお母さんが笑いを誘う一幕もありました。
念珠作りでは、「珠の一つひとつが仏様であり、それを身につけることで自分の心にも仏様があると日常的に感じるためのもの」という説明のもと、それぞれが好きな色を選び真剣な表情で制作。
完成後は大きな念珠を車座になって回す時間がありました。輪になった大きな念珠は、隣の人が動かせばたわみ、引っ張られ、その揺れがそのまま自分の手元にも伝わってきます。誰かとのつながりを、腕の感覚として意識させられる時間です。
そして同時に、左腕にはめた自分だけの小さな念珠――そこには、それぞれが込めた自分自身の願いがあります。大きな輪の中に生きながら、自分の願いも確かにそこにある。




高橋さんの「大きな念珠は社会と一緒。一人ひとりの念珠を大切にしながら、社会とつながっている感覚を持つことが大切」という言葉が、まさにその手触りとして残る時間でした。
霊宝館では、学芸員でもある大森照龍館長が国宝・重要文化財の数々を、詳しく、そして優しく案内してくださいました。

■ もうひとつの宿坊、もうひとつの物語
この日の宿泊は、織田信長・上杉謙信ゆかりの高野山真言宗 総本山金剛峯寺塔頭寺院「無量光院」へ。重要文化財級の襖や掛け軸が随所に飾られる空間で、夕食の席では寺の方が文化財にまつわる話を聞かせてくださり、両家族との会話が弾みました。
庭に面した部屋で迎えた夕食では、窓から抜ける風にのって、季節にはまだ早いひぐらしの声が響いていました。旅の折り返しを迎えた夜は、静かに、しかし確かに深まっていきました。




最終日の朝は、護摩を焚きながらの1時間強のお勤め。住職から「人生には良いことも悪いこともあるが、弘法大師さまが共にいてくださる」という教え――四国のお遍路で「同行二人(どうぎょうににん)」と呼ばれる考え方をうかがいました。
見事な杉木立の参道を、お地蔵さまにお参りしながら奥之院へ。




「ここは空気が違う」と誰もが感じる清々しさの中、宿坊「成福院」の住職に教えていただいた、全国各地の大名の墓と、その出身地から運ばれ植えられた杉が、数百年にわたり日本中の人々の心をこの地に寄せ続けてきたというお話も思い出されました。
燈籠堂・御廟前では、高橋さんの「仏心は皆の心にある。どんな時もそれを忘れずに」という言葉とともに、一同で「南無大師遍照金剛」を7回唱え、心を寄せました。杉の梢を抜ける風の音だけが、しばらくその場を包んでいました。

■ ここからが、はじまり
お開きの会は、頌徳殿にて行われました。法人を代表して伊藤からは、「3日間、体調を崩すことなくご一緒できたこと」への感謝と、「これきりではなく、ここから。つながって共に応援していく」というメッセージを伝えました。
奥川さんのお母さんは、「まだ見えていない自分の何かが見えたら、と思って参加した。
“当たり前にあること”のありがたみに気づけた」と振り返り、矢野さんのお母さんは、「家族だけでは高野山は候補になかったが、この機会に来られた。新くんも目を開けて、何かを感じていたのでは」と語ってくださいました。その隣で、矢野さんのお父さんは静かに涙を浮かべていました。
高野山真言宗社会人権局の素和さんからは、「ハードルを越えて来てくれたご家族をみんなが助けてくれる、世の中とはそういうもの、という思いを伝えたい。僧侶の言葉から感じたことがあれば、ぜひ持ち帰ってほしい」との言葉をいただきました。
そして最後に、両家族を代表して空くんから、人権局の皆さまへ、ご家族みんなの感謝のメッセージを込めた色紙が手渡されました。3日間、たくさんのものを受け取ったご家族が、自分たちの言葉で気持ちを返した瞬間でした。




これから両家族が日常生活へ戻っても、このつながりが続いていくようにという願いを込めて、お見送りとなりました。3日間、静かに積み重ねられてきたものが、それぞれの日常へと運ばれていきます。
■ 代表理事 大住 力 コメント
高野山は、幾世代にもわたって、数えきれない人々の祈りが積み重ねられてきた場所です。そこにご家族と時間を共にさせていただき、あらためて感じたことがあります。本気で今を生きる人たちのそばに身を置くことで、私たち自身が本当に大切なものに気づかされる。今回もまた、そういう3日間でした。
高野山で教えていただいた「同行二人」という言葉のように、私たちは決して一人で生きているのではありません。誰かと共に歩んでいるからこそ、見えてくるものがあります。
ウィッシュ・バケーションは、お招きして終わりではありません。ここからが、すべての始まりです。
この3日間を実現できたのは、成福院さま、無量光院さま、高野山真言宗社会人権局の皆さま、高野山高等学校インターアクトクラブの生徒の皆さま、霊宝館・大森館長、そして何より奥川さん家、矢野さん家のご家族のおかげです。心より感謝申し上げます。
■ 開催概要
日程: 2026年7月10日(金)~12日(日)
場所: 高野山(成福院、無量光院、金剛峯寺、奥之院、大師教会、霊宝館ほか)
招待家族: 難病を患うお子さんとご家族 計2家族
■ ご協力
高野山真言宗総本山金剛峯寺社会人権局
■ 法人概要
公益社団法人 難病の子どもとその家族へ夢を
代表理事:大住 力
所在地:東京都中央区入船2-9-10 五條ビル4A
設立:2010年(2012年内閣府より公益社団法人認定)
公式サイト:https://www.yumewo.org
■ 本件に関するお問い合わせ
公益社団法人 難病の子どもとその家族へ夢を
ウィッシュ・バケーション担当:伊藤 洋(いとう・よう)