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和歌山の伝統工芸「根来寺根来塗」の塗師・池ノ上辰山さんが文化庁長官表彰

表彰状を手にする池ノ上辰山さん

表彰状を手にする池ノ上辰山さん

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 根来寺根来塗師の池ノ上辰山(しんざん)さんが12月6日、文化庁長官表彰を受けた。

岩出市歴史民俗資料館で開かれる根来塗講座の様子

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 池ノ上さんは、根来塗製作に携わり、後進の育成に努め、文化財保護に貢献したことが認められた。

 根来塗は、一乗山大伝法院根来寺(岩出市根来)で鎌倉時代から室町時代にかけて、数千人の僧のために作られた漆製品の中でも、金と価値が同格だったという辰砂(しんしゃ)を使った朱色の漆器。下地の段階から漆を使うため頑丈で、角が欠けにくく、使い込むにつれて擦れたところから黒色の漆が見えてくることが特徴。同寺での生産は1585(天正13)年の羽柴秀吉による紀州攻めで途絶えた。

 池ノ上さんは、父親の集めた骨董(こっとう)で根来塗を知り、現代まで使えることや朽ちていく様に魅力を感じたという。元奈良国立博物館学芸課長で根来塗の権威であった河田貞さんの研究を基に、2000(平成12)年、根来寺敷地内にある根来塗工房で中世の根来塗の技法を復刻した。和歌山や大阪、京都、東京で弟子と展覧会を行うほか、中世の技法を継承しようと、プロ向けの講座や皿・わん・箸などを作る市民講座を開く。地元で漆塗り体験コーナーの出店や漆の木の植林などにも力を入れる。

 池ノ上さんは「展覧会でお客さんに『使い込むうちにつやが出てきた』と喜んでもらえるとうれしい。丈夫な下地によって、割れにくく、傷がついてもはけ目で見えにくい。現在では、さまざまな産地で根来塗が作られているが、今回の表彰で和歌山の塗りが根来塗と認められ、伝承に尽力したと評価してもらえた。往時のように魅力あるものを作れる人材を育成していきたい」と話す。

 12月18日~24日はあべのハルカス近鉄本店で、2020年1月2日~8日は近鉄百貨店和歌山店で展覧会を開催する。

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