根来寺根来塗師の池ノ上辰山(いけのうえしんざん)さんが3月6日、「根来山げんきの森」(岩出市根来)に植樹した漆の木から、初めて漆の採取を行った。
池ノ上さんは2006(平成18)年、日本漆工協会の優秀漆工技術者に選ばれ、もらい受けた漆の苗木50本を2007(平成19)年3月に同地に植樹した。この日は、14年間かけ成長した漆の木を刃物で傷を付け、漆を採取する漆掻(か)きを初めて行った。
鎌倉時代に始まった一乗山大伝法院根来寺(同)での漆器生産は、1585(天正13)年の羽柴秀吉による紀州攻めで途絶えた。池ノ上さんは2000(平成12)年、奈良国立博物館の元学芸課長で根来塗研究の権威・河田貞さんとともに、根来寺敷地内にある根来塗工房で中世の根来塗の技法を復刻した。
池ノ上さんは「工芸家として、後世に原材料を残したい。14年間育ててきた漆の木に傷をつけるのは、覚悟がいった。木は自分の傷を治すために漆を出すので、徐々に傷をつけ、漆を採取していく。椀1つに300ミリリットルほどの漆が必要。漆は育った土地の特性があるので、性質を見極めながらが作品作りに生かしていきたい」と話す。