和歌山市在住の前田香さんが6月15日、発達障がい児用の服の着方のアドバイスなどを行うウェブサイト「fukufuku(ふくふく)312」を開設した。
前田さんは、重度の自閉症で発達障がいを伴う長男が市販の服を着ると、ミシンの縫い目やワッペンの凹凸などに敏感に反応し脱いでしまうことから、自分の手で服を作り始めたという。同じ悩みを持つ人はいるのではないかと、発達障がい児の保護者にアンケートを行ったところ、100人中86人から「子どもの服に悩みがある」と回答があったため、服に関する問題を解決する支援活動「fukufuku312」の取り組みを始めた。活動名は「服でたくさんの親子に幸福になってほしい」との願いと息子の誕生日にちなみ名付けたという。
生地には、柔らかく伸縮性のある綿を使い、身幅を広くし腕が通りやすいようにしたり、裾に手形のワッペンで目印をつけることで着方を分かりやすくしたりするなど工夫を凝らす。前後裏表に同じデザインを施したシャツなど、子どもの発達段階に合わせて要望を集約して製作する。そのほかボタンやファスナー、タグ、凹凸のあるプリントを付けないなど細部まで配慮する。
ウェブサイトでは、服の着方の教え方や障がいを抱える子どもを育てる上でのポイント掲載、パンフレットの配布などを行い、発達障がい児を持つ保護者を支援し、市民への認知度向上に努める。製作した衣服は、手芸品販売サイトを使って服の販売を行う。
有田市在住で活動を支える武本理栄さんは「SNSで『fukufuku312』を知り、協力を申し出た。私の子どもも服の前後が分からなかったり、靴を反対に履いたりするなどの悩みがあり、この活動を通して子どもの成長を助けられる糸口が見つかれば」と話す。
前田さんは「症状は子どもによってさまざま。親の手助けなしに一人でできることが増えれば、子どもは『自分もやればできるんだ』と自己肯定感がついて希望が持てる。障がいを抱える子どもの保護者は日々試行錯誤しながら子育てをしている。これが正解という万能薬がないからこそ、たくさんの人が自らの経験を発信、共有すれば、子どもにとって適切な解決策を見つけられる」と話す。